小さなトラックの話 [minicar]
ホンダが初めて商品として作ったクルマは、当時ダイハツのミゼット等の軽三輪から、
徐々に変わりつつあった小口配達用の軽4輪車(いわゆる軽トラ)でした。
それは同時に発表された2座のスポーツカー、S500よりユニークな生い立ちを持った小さなトラックです。
このクルマを語るにはどうしても避けて通れない、幻のスポーツカーがあります。
S360と言うこれまた小さな、しかし革新的なクルマです。
当初、ホンダは360ccの軽自動車をFFの実用車として作るつもりで、
これは空冷V4ユニットのテストベッドとして作られた試作車ですが、何とも妙なカタチですね(笑)
でも・・・、これがミニカーになったら絶対買います(爆)
しかしドライブシャフトの耐久性等の問題で駆動方法は一般的なFRに、
(まぁSは後輪に一部チェーンを使っていましたが)
エンジンは水平対向を経て、この頃としては画期的な直4DOHCに変更されました。
これは当時の社長本田宗一郎氏の意向が大きかったようですが・・・
そして3m×1.3mのマイクロスポーツは試作車が数台作られて、
モーターショーに展示され、マスコミや販売店オーナーの集まりでお披露目されるところまで行きました。
このS360(AS250)がはたして何台作られたか・・・
そして・・・現存するのか・・・
これは今や諸説入り乱れ、雑誌の記事やネット上で、
かなり踏み込んだ調査の結果が発表されていますが、
間違いなく複数台作られているので、“どこか”にある・・・と思っています。
いまだに、コレクションホールの倉庫に残骸がある、とか。
当時、全国の有力ディーラーに販促用に貸し出されたまま帰って来なかった個体が、
どこかの倉庫にあるはずだ、とか。
今でも都市伝説のひとつとして語り続けられる、S360存在説と言うのがあります(笑)
さて、最初の写真はT360とS500の新発売をPRするために、
全国をパレードしたキャンペーン時のモデルですが、
大きな(1/43)エブロ製はルーフの文字が逆で、サイドの文字も大きすぎると指摘されています。
後発のトミカヴィンテージの方が正解ですね。
で、同時に写っているS500もまだ発売前の試作車な訳で、
実は数年前にこのクルマそのものが“発掘”されました(笑)。
もはや残骸と言うような状態ですが、市販車とは多くの部分で違いがある歴史的な遺産です。
古いクルマを大事に乗り続けると、重税というペナルティが科せられるという、
自分たちの作ったものに誇りが持てない、何とも情けないこのクルマ文化の貧しい国ですから、
試作車や初期量産車が残っているというのは奇跡に近いことなんです。
この発見時にT360(AK250)の試作車も見つかりました。
こんな状態でもエンジンや補機類に試行錯誤の跡を見ることができるのです。
さて、話をミニカーに戻して(笑)、これはエブロのT360ですが、
軽トラのエンジンとは思えない、レーシングカーのようなタコ足も再現されています。
お察しの通りこのエンジンは「幻のスポーツカー」と基本は同じものです。
当時としては驚異的な30PS/8000rpmと言う高回転型で、
リッター100PSに届きそうな高性能エンジンでした。
実はT360に“反応”してしまったのは、
去年の暮れにアド本店でこれを揃えた事で俄然火が付いてしまったからでした(笑)
タッカーの「おもひで軽トラ」シリーズです。
ユニークさでいえばオプションの、この「クローラー」も負けてはいません。
御覧のようにいくつかのパーツを替えることで“雪上車”に変身できるのです(笑)
この軍用ハーフトラックのようなキャタピラーの取り付けは、
タイヤ交換のような簡単な作業ではなくて、ほぼ“改造”に近い装着作業だったようですが・・・
さすがに低速トルクの無い高回転型のエンジンはトラックには不向きだったようで、
’67年にはこのTN360の登場でT360は生産を終了しています。
それでもTN360も十分にユニークな軽トラでした。
パワーユニットはFFの軽乗用車N360のをそっくり利用したミドシップです(笑)
エンジンはさすがに床下に納める都合上、ほぼ横倒しにされていますが後車軸直前にあり、
点検は荷台のフタを外して行いました。
エブロはちょっと手抜きもありますが床下も良く再現されています。
もちろん、“ハーフトラック仕様”にするキットも存在します(笑)
オプションとはいえ高価なこの「クローラー」がどれほど売れたのかは興味がありますね。
これもモデルはエブロです。
TNはより豪華で、安全性にも配慮したTN-Ⅲに発展します。
TN-Ⅲはトミカでモデル化されたのでバリは豊富ですね。
この2台も実はちょっと違います(笑)
ドアハンドルが無いのがわかりますでしょうか?
まだ日本製の時にも、型の事情かコストの事情かわかりませんが、
細かいところの“省略”は良くありましたね。
ミニカーコレクターの中でも、トミカコレクターと呼ばれるヲタクを喜ばせる配慮のひとつですかねぇ?(笑)
この郵便仕様でも同じような「配慮」が・・・(笑)
このペプシバージョンでは難易度はちょっと上がります。
まず左のドイツ郵便仕様と白ペプシは簡単です。
後ろの2台をじっと見てください(笑)
御覧のように“色違い”と判定されるのです(笑)
この辺の深さがトミカコレクターがヲタクと呼ばれる所以です(爆)
マスコミ・トミカ、知ってますかドラマ「ケーキ屋ケンちゃん」(笑)
ケンちゃんは、「あの人は今」コーナーの常連として波乱の人生を公演活動中とか・・・
トミカ博2002ではグリルのメッキが無くなり、ホイールも変わっていますね。
商品番号が18から19になっています。
縦目4灯という軽トラらしくない“外し技”でデビューしたTN-Ⅴです。
写真は三角窓が廃された後期型ですね。
フロントの大きなHマークがエンブレムになったのもⅤからですね。
サクラのちょっと大きめの珍品ですが、出来はいまいちですかね(笑)
荷台が少し長すぎるせいかも・・・
トミカ・ヴィンテージはなかなか良いプロポーションですが・・・
もうこのサイズでも、最近は目が辛いですね(笑)
で、この後はアクティに続いていくわけですね。
軽自動車は日本独自のカテゴリーとして進化を遂げてきた、ある意味特別なクルマです。
中でも“軽トラ”と呼ばれる小さなトラックは、物流の最後の一角を担い、仕事の道具として共に働き、
農村では農機具の一部として、あるいは個人の重要な移動手段として、
価格も税金も1番安いクルマとしてかなりの台数が走っています。
コスト最優先の今と違って、ホンダが手探りで作り始めた小さなトラックは、
アイディアや工夫の一杯詰まった、とても面白い機械でしたね。
ミニカーをメインに書いているうちに、相変わらずクルマ論に行きたがるのはいつものことですが(笑)
お付き合い頂いた方、有難うございます。
2012-09-17 15:35
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コメント(21)
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ノスタルジックで何とも素敵なミニカーですね。
雪国仕様のオプションには脱帽です!
by ベアトラック (2012-09-18 06:31)
国産車では初めてのDOHCが軽トラというのも、いかにもホンダらしいことで、今考えても凄い事だったんですね。
それにしても素晴らしいコレクションですね。
by conta (2012-09-18 07:08)
ベアトラックさん
360cc時代の軽トラって、驚くほど小さいんですね。
当然のことですが運転席も狭くて前後方向なんて、
膝とハンドルが当たりそうです。
で、子供でもなんとか運転できました(笑)
時効でしょ。
スキーとキャタピラ、今のスノーモビルと同じですね(笑)
by 1275GT (2012-09-18 20:29)
contaさん
初期のT360はバイクと同じで気筒ごとに4個のキャブが付いていました。
調整が大変なんで、途中からツインキャブになったのですが・・・
ホンダの最初のF1マシンは1500ccのV12気筒でした。
で、12個のキャブを感で同調させるホンダのメカニックを見て、
ライバルチームのメカニックは畏敬の念を抱いたそうな・・・(笑)
by 1275GT (2012-09-18 20:44)
さすがホンダ、軽トラにもホンダスピリッツ(笑)
しかし。。。。見事なコレクション!トミカも良いですね♬
by komakura (2012-09-19 01:29)
長い!
長過ぎる!(爆)
全編完璧に理解するまで読むと、年内掛かります。
今年もお疲れ様でした(笑)
ミニカーの下周りにランニングシャツだけで頭突っ込んでる
変なおじさんが一服の清涼剤の様でした・・・。
昨日R4で普通に仕事してるバモスを見ました!
by ちんたん♪ (2012-09-19 22:55)
komakuraさん
偶然のこととはいえ、最初のクルマがこんな過激な軽トラになるとは・・・
しかし複雑で繊細なエンジンは相次ぐトラブルで、
クレーム処理に追われた販売店では不評でした。
トミカはさすがに老眼には辛いサイズです(笑)
場所を取らないのと財布にやさしいのはいいんですがねぇ・・・
by 1275GT (2012-09-19 23:08)
ちんたん♪さん
これは前編です、ミニに乗れるまで寝ないで読んでください。
ランニングシャツは有名な某サビ取り雑誌の1ページですが、
強烈なマニアはだいたいこんな服装です(笑)
“山”から掘り出してきたこの残骸は、
ホンダも持っていない秘宝なんですよ。
スタンダードさんのラドフォードもどきは、
なんか、養生ビニールみたいなのに包まれていました(笑)
あそこです・・・
by 1275GT (2012-09-20 00:01)
ホンダの試作車、ミニカーが出たら、私も絶対買います。
サービスカーについての御教授ありがとうございました。
なんか、トミカヴィンテージ買いたくなってきました。
1/43のT360、一台さけ持っています。
それがクローラーつきってのが、我ながら偏ってますねぇ(爆)
by ねこざかな (2012-09-23 01:56)
ねこざかなさん
本田宗一郎という人には、試作したものを取っておくと、
新しい考え方の邪魔になるという持論がありました。
ゆえに、テストが済むとすべて廃棄してしまったらしいです。
それでもマニアはいくつかの偶然によって生き延びた、
スクラップ状態の試作車を執念で探し当てるのですよ(笑)
S360だって絶対あると思います・・・
ミニカーにならないのかなぁ(笑)
昨今の社会的情勢だけではないのでしょうが、
世界のミニカー工場の、新製品生産が大分遅れていますね。
事によると“日本車”はもう作らない、なんて言いそうで・・・
by 1275GT (2012-09-23 21:52)
なるほど・・・秘宝・・・。
だいたい・・・下ネタですよね?(爆)
だってランニングの人、それしか着て無いみたいに
見えるぢゃ無いですか~(笑)
でも、ランニングが通じあえて良かったです♪
最近はタンクトップとかぬかしやがるから・・・
スタンダードさんの暗号が解けない・・・まさか晒し物に?
ウチのは土曜までに処刑台に上がります(爆)
ウマでした・・・。
たぶん自分で引っ張って行くかな(笑)
by ちんたん♪ (2012-09-25 23:56)
只今雨期です。
5300キロ離れた赤道直下からコメントします。
師匠、僕のラドフォード(笑)を防空壕で見てしまったのですね。
ちんたんさん、あそこで(ヒント:ミッキーマウスの恋人)ラッピング状態のまま、主人の帰りをハチ公状態で待っているはずです。
by スタンダード (2012-09-26 00:47)
ちんたん♪さん
通は、ランニングの“上”にTシャツもとい丸首着用です。
もちろんスソはズボン(パンツはパンツです)の中です(笑)
それに、だいたいマニアックな話は下ネタでたとえています。
スタンダードさんのポール号はたけささんは見たかも。
屋根付きセキュリティ付きで預かって貰っているそうです。
とうとう歩いていける所にミニ屋さんが出来ちゃうんですか?(笑)
さっき出たついでに見てきました、
たしかあそこは昔、修理工場があったところかな・・・
今度行って見ます。
by 1275GT (2012-09-26 20:52)
スタンダードさん
はるか遠く、しかも雨期の最中有難うございます(笑)
しばらく乗らなかったので、キャブのニードルが固着したのでしょうか?
いずれにしてもキャブのガソリンは抜いておいた方がいいかも。
まぁ、ミニ屋さんに預けてあるんですから安心ですね(笑)
by 1275GT (2012-09-26 21:18)
コーヒーカップさん
nice!有難うございます。
by 1275GT (2012-09-26 21:41)
!っ
それは安心ですね!
by ちんたん♪ (2012-09-26 23:17)
ちんたん♪さん
度々のコメン、ト賑やかでまるで人気ブログに見えて助かります。
例のお抱えショップ(笑)からウチの方を眺めて、
小学校の方向に大きな農家が見えますが、Yさんちです。
庭の納屋に’88ジョンクーパーが収まっていますよ(笑)。
Yさんちの月極、空きを聞いておきましょうか?(笑)
by 1275GT (2012-09-27 08:26)
今日勝鬨橋をキレイなジョンクーパーと渡りました。
どこのどなたか知りませんので、写真は非公開(笑)
足立53てだけで古く見えちゃうんですね~。
ポジキャンの脚がキュートでした♪
直ったら連れて帰るので、大丈夫です(笑)
家のドアから2mのところが開いてます♪
(野戦整備場にしたら殺されそうです(笑))
by ちんたん♪ (2012-09-27 23:40)
ちんたん♪さん
Yさんのジョンクーパーも新車で買って24年目、
ウチのチェルシーと“いつまで乗るか”を競っていますが・・・(笑)
正しくミ〇マ〇ヤ〇で定価(しかもオプション多数)でお買いになったので、
当時チェルシーの倍以上したという高級外車です。
この競争は多分“順番”を守って、ワタシの負けですかね(笑)
ドアから2m!って、ドラえもんですか?
名前は似てるけどジョン・レノンじゃなかったんですね(爆)
by 1275GT (2012-09-28 12:59)
何とタイムリーな記事でしょう。
最近、ホンダ神話という本を読んでおります。
本田宗一郎という人に言わせると、
S500もソバ屋の配達に…ということになっちゃうそうです。
アタシが住んでるこの辺では、
アクティという名のバモスのアタマが付いたトラックが
昆布取りのシーズンともなれば朝から漁場に停まっています。
しかもホンダ軽トラ伝統の水色!
も複数いて、ビックリです(驚)
画像を見て思い出しましたが、TN360の初代?TNⅠ?
グリルがステップバンと共通部品とかどこかで読んだような…。
後編を期待しています。
by minico (2012-09-29 21:16)
minicoさん
正直、今のホンダのデザインは好きになれません。
N-Boxなんか軽の規格に合わせた、フツー過ぎるデザインです。
初代バモスやステップバンを作ったメーカーとも思えませんね。
出てすぐに札幌で借りたCR-Zの時も厳しいことを書きましたが、
今見てもあまりカッコイイとは思いませんね(笑)
“バモスのアタマ”は失敗作の3代目アクティですね(笑)
エンジンは床下なのに、フロントにクラッシャブルゾーンとして、
小さなボンネットがあるので軽規格では荷台が短く、
さらに前輪が前にあるので、小回りが効かず不評でしたね。
いっそスバルサンバーのように前輪をドアの下まで下げれば・・・
(あれもオーバーハングが長くて“不思議”なカタチでしたが(笑))
もちろん4代目はすべてを解決してフツーの軽トラになっています。
おっしゃる通りTNーⅠとステップバンのグリルは共通パーツです。
もちろん、とっくに製廃でメーカーからパーツはでませんが(笑)
後編はやっぱり“S”のことかな・・・
by 1275GT (2012-09-30 18:34)